歴史は繰り返すのか

同じ出来事と、同じ問い

「歴史は繰り返す」
この言葉は、
警句としても、
諦観としても
用いられる。

戦争、分断、権力の集中。
過去に起きた出来事は、
形を変えながら再び現れる。

だが、
本当に歴史は、
同じことを繰り返しているのだろうか。

繰り返されるのは「出来事」か

同じような出来事が起こるたびに、
私たちは歴史の反復を語る。

しかし、
出来事そのものは、
完全には一致しない。

時代背景。
技術水準。
価値観。
関係する主体。

それらは、
常に異なる。

繰り返されているのは、
出来事の外形ではなく、
人間の行動様式なのかもしれない。

人間はどこまで変われるのか

歴史が似た展開を見せるのは、
人間の認知や感情が大きく変わらないからだ。

恐怖に煽られる。
単純な敵を求める。
安心を与える語りに引き寄せられる。

こうした傾向は、
教育や制度が整っても、
完全には消えない。

人間は、
進歩しながらも
同じ弱さを抱え続ける。

記憶される歴史と忘れられる歴史

歴史は、
すべてが平等に記録されるわけではない。

勝者の歴史。
語りやすい歴史。
物語として消費しやすい歴史。

忘れられた部分は、
教訓として参照されにくい。

その結果、
同じ過ちが「初めて起きたこと」のように再現される。

学んでも繰り返す理由

「歴史から学べ」とよく言われる。

だが、
学ぶことと、
行動が変わることの間には距離がある。

知識として理解していても、
当事者になった瞬間、
感情や利害が判断を歪める。

歴史は、
常に他人事として理解されやすい。

繰り返しは必然なのか

歴史が繰り返されるのは、
避けられない運命なのだろうか。

完全な回避は難しいかもしれない。
だが、
形や規模、
被害の深刻さは変えられる。

繰り返しは、
同一ではなく、
程度の問題でもある。

歴史が示すもの

歴史は、
未来を予言するものではない。

だが、
人間がどんな状況で、
どんな選択をしがちかを示している。

それは、
警告というより、
鏡に近い。

結び――歴史は問いを残す

歴史は、
同じ答えを繰り返しているのではない。

同じ問いを、
私たちに突きつけ続けている。

恐怖にどう向き合うのか。
権力をどう扱うのか。
他者をどう扱うのか。

歴史は、
繰り返すかどうかを決めているのではない。

それにどう向き合うかを、
常に私たちに委ねている。

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